慢性疲労症候群

■ はじめに
慢性疲労症候群(CFS)とは、これまで健康に生活していた人に、強い全身倦怠感、微熱、頭痛、筋肉痛、精神神経症状などが起こり、長期にこの状態が続いて健全な社会生活がおくれなくなる疾患です。睡眠や休暇で疲れが改善する単なる慢性疲労とは異なる病態です。

■ 頻度と性差
有病率を正確に指摘することは難しい病気です。何故ならこの病気を認識している医師自体が少ないからです。報告では10万人あたり7人から38人とされています。その約8割近くは女性で、20−30台、高学歴の頑張りやさんに多いと言われています。

■ 原因
CFSでは発症時にしばしば発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹などの急性感冒様症状が認められることや、集団発生の報告があることから、感染症の関与が疑われています。その代表的なウイルスとしては、Epstein-Barrウイルス(EBV)、エンテロウイルス、ヘルペスウィルス(HSV-6)、ボルナ病ウイルスなどがあげられています。

ウイルス感染症だけでなく細菌感染やクラミジア、マイコプラズマ、トキソプラズマ、カンジダなどの感染症がきっかけとなり、CFSを発症したとの報告もあります。

厚生労働省CFS診断基準では、明らかな感染症後に発症した症例は「感染後CFS」として区別しています。

■ 症状
主な症状は重篤な疲労(通常6カ月以上継続)であり、日常生活を妨げ、労作、運動、頭痛、咽頭痛、その他のストレスによって増悪します。これにリンパ節の腫大、咽頭痛・頭痛・関節痛・筋肉痛などの痛み、微熱の他、物忘れ、集中力の低下、睡眠の困難など伴うことがあります。

■ 診断
明らかな原因は不明であり、通常の血液検査、ホルモン検査、膠原病の検査、胸部レントゲン、心電図検査などでも大きな異常はありません

CFSの診断基準としては、厚生労働省が発表したものがありますが、これは1988年に、米国防疫センターが診断基準として作ったものをもとにしています。

【診断】大前提があって、Aが6項目以上+Bが2項目以上、あるいはAが8項目以上
● 診断の大前提
1 激しくくり返される「だるさ」が6か月以上続く
2 検査によって他の病気がないことが明らか
● 診断の小前提
A  自覚症状
1 微熱がある
2 のどが痛い
3 リンパ節が腫れて痛い
4 筋力が低下する
5 筋肉が痛む
6 作業後、24時間以上続く全身の倦怠感
7 頭痛がする
8 関節が痛む
9 神経精神症状(まぶしい、うつ状態、思考力低下など)
10 過眠・不眠などの睡眠障害
11 慢性疲労症候群って、どんな病気?
B  医師が診察によって認めるもの
1 微熱がある
2 滲出液のない咽頭炎
3 リンパ節が腫れている、または押すと痛い
※ ただし、これらの症状が1か月以上たって2回以上現れること

■ 治療
慢性疲労症候群(CFS)のいちばんの治療法は、ゆっくりと休養すること。“がんばり”や“早く仕事に戻ろうという焦り”は、逆効果です。自分に合った薬で症状を和らげて、自然に回復するのを待ちます。抗うつ薬投与はこれまでのところ最も効果のある治療と思われ、約80%の方に効果があると言われています。