バセドウ病

■ 性差と頻度
甲状腺機能亢進症の代表的な病気がバセドウ病です。この病気は甲状腺に対する自己免疫疾患のひとつで、女性では150-200人中1人いると言われています。好発年齢は20-30代で、女性が男性より約5倍と多いのが特徴です。

■ 原因
バセドウ病 原因自分自身の体の一部である甲状線を異物とみなしてしまい、甲状腺の細胞の表面にあるTSHレセプターに対する自己抗体(TSHレセプター抗体、TRAb)が産生されるために発症する病気です。このTRAbが甲状腺のTSHレセプターに結合すると、常に甲状腺を刺激してしまうため、甲状腺ホルモンを作り続けてしまうバセドウ病になると考えられています。

■ 症状
甲状腺ホルモンは新陳代謝に関わっているホルモンです。よって甲状腺からホルモンが必要以上に大量に産生されると、全身の新陳代謝が活発になるため以下のような様々な症状が現れます。

1. : 暑がり、疲れやすい、だるい、体重減少
2. : 上昇して微熱がでる
3. : 目つきがきつい、眼球突出、頚部腫大(甲状腺腫大)
4. : イライラ感、落ち着かない、集中力低下、不眠
5. : 動悸、頻脈、血圧上昇、心房細動、心不全、むくみ、息切れ
6. : 食欲亢進、食欲低下、口渇、軟便、排便回数増加
7. : 発汗、脱毛、かゆみ、皮膚が黒っぽくなる
8. : 脱力感、筋力低下、骨粗鬆症、手足のふるえ
9. : 月経不順、無月経、不妊
10. : コレステロール低下、血糖上昇、肝障害

※眼が出てくる眼球突出はバセドウ病の代表的な症状ですが、眼球突出をきたす割合は3-4割程度です。特に喫煙している方に多く、禁煙することが重要です。

■ バセドウ病の診断ガイドライン
A)臨床所見

1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
2.びまん性甲状腺腫大
3.眼球突出または特有の眼症状

B)検査所見

1.遊離T4(FT4)、遊離T3(FT3)のいずれか一方または両方高値
2.TSH低値(0.1μU/ml以下)
3.抗TSH受容体抗体(TRAb, TBII)陽性、または刺激抗体(TSAb)陽性
4.放射線ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性

など

■ 治療
甲状腺の働きが活発になり過ぎるバセドウ病の治療は、甲状腺ホルモンが過剰に作られないようにする事です。バセドウ病の治療方法には、抗甲状腺剤の内服、手術(甲状腺亜全摘術)、アイソトープ治療(放射性ヨード内服)の3つの治療法がありますが、病気の程度やライフスタイルなどによって異なります。
はじめは抗甲状腺剤を服用し、個人差や病気の状態など経過を見ながら治療法を決めます。
どの治療法を選ぶにしても、大切なのは甲状腺ホルモンを正常な量にコントロールする事です。甲状腺ホルモン量が正常になれば、健康な人と変わらない生活ができます。

1.抗甲状腺剤
バセドウ病の治療法である抗甲状腺剤は、基本的にMMI(メルカゾール)、PTU(チウラジールかプロパジール)の2種類しかありません。薬は甲状腺ホルモンの産生を抑制する作用があり、病気により過剰に産生された甲状腺ホルモンを正常値内に入れるよう薬の量を調節します。
長所 :外来通院治療であること、治療効果が可逆的であること、妊娠・授乳が可能
短所 :治療期間が長い、寛解率が低い、白血球減少症や薬疹などの副作用がある

2.外科的治療(甲状腺亜全摘術)
長所 : 短期間で寛解になる、寛解率が高い
短所 : 入院が必要、頚部に手術痕が残る、術後に甲状腺機能が低下することもある
術後に反回神経麻痺の可能性がある

3.アイソトープ治療
長所 : 永久寛解率が高い
短所 : 妊娠を希望されている人や授乳中の人には適応がない
治療後に甲状腺機能低下症の発生が高い
統計学的に二次発ガンが増えるとの報告はありませんが、100%否定は出来ない

3種類のいずれかの治療を選択しても、治療効果が現れれば症状はほとんどなくなります。日常生活では、運動・仕事など健康な人と同じように出来るようになり、日常生活での制限は特別ありません。