性器クラミジア感染症

■ はじめに
性器クラミジア感染症は現在、世界的に最も多い性感染症(sexually transmitted diseases;STD)です。我が国においても、5大性感染症 (クラミジア感染症、トリコモナス症、淋菌感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ) の中で、最も多い感染症です。

■ 頻度と性差
近年、ほぼ全年齢層で増加していますが、20〜24歳、30〜34歳でその増加が著明です。また、男女ともに患者年齢のピークは20〜24歳ですが、20歳以下の患者数は女性が男性に比べて多いのが特徴です。

■ 症状
女性では子宮頚管炎が起きますが、上行感染が進行すると女性子宮内膜炎や子宮付属器炎、骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory diseases;PID)、肝周囲炎 (Fitz-Hugh Curtis症候群)を合併することもあります。よって腹痛の程度は軽度のものから激痛のものまで様々です。

• 子宮頚管炎
自覚症状のない場合が多いですが、内診所見では子宮頚管の粘液膿性分泌物の存在や子宮頚部の発赤、腫脹などを認めます。無治療で放置すると慢性感染状態から卵管が閉塞して不妊の原因になることもあります。新生児では出生時の母体子宮頚部からの感染のために封入体結膜炎や肺炎、成人ではトラコーマ、封入体結膜炎などの眼疾患を引き起こす場合があります。

• 骨盤内炎症性疾患 (pelvic inflammatory diseases;PID)
クラミジアが子宮頚管を超えて上行感染が進行すると、子宮内膜炎、卵管炎、卵管・卵巣膿瘍、骨盤腹膜炎などを発症します。急性PIDは症状が定型的ではなく、診断が難しいのが現状です。右下腹部痛の場合には急性大腸炎、大腸憩室炎、虫垂炎、尿管結石、子宮外妊娠などと鑑別が必要です。性行為のある女性で下腹痛や圧痛があり、他の原因が考えにくければ、クラミジア感染症を疑います。また、38.3℃以上の発熱、異常な膣・頚管分泌物、血沈の上昇、CRP上昇も診断の助けとなる。炎症が肝周囲にまで進展し、強い右上腹部痛を自覚する重症型はクラミジア肝周囲炎(Fitz-Hugh Curtis症候群)と呼ばれます。

■ 診断
病原体であるChlamydia trachomatisは小型(0.3〜0.4μm)の微生物で、診断には血清学的検査や免疫学的抗原検査などを行います。血清学的診断では、血清中のクラミジア抗体(IgG、IgA、IgMの各抗体)を測定します。また女性では可能な限り、内診にて子宮頚管炎の所見を確認し、子宮頚管から検体を採取してクラミジア抗原(PCR法)を調べます。クラミジア抗体検査や抗原検査(PCR法)が100%の診断率ではありませんので注意が必要です。

■ 治療
抗生剤による治療を行いますが、テトラサイクリン剤、マクロライド剤、ニューキノロン剤などが使用されます。いずれにしてもパートナーの治療も不可欠です。妊婦さんの治療には、使用禁止抗生剤がありますので、主治医と良く相談の上で治療薬剤を決定して下さい。