女性とニキビ

■ はじめに
ニキビは毛穴にたまる皮膚の角質や汚れです。皮脂と角質が混じり合うとコメドと呼ばれるかたまりができます。これがニキビの初期段階です。そのコメドを栄養にして、アクネかん菌が繁殖します。皮膚のアクネかん菌が増えると、皮脂を分解して不飽和脂肪酸を放出します。これが皮膚に炎症を起こし、ニキビとなります。

■ ニキビの原因

  1. 女性ホルモンバランス
    皮脂の分泌は、男性ホルモンと女性ホルモン(黄体ホルモンと卵胞ホルモン)の働きによって、コントロールされています。このホルモンバランスが崩れると、皮脂の分泌が盛んになり、ニキビができやすい状態になります。

    女性ホルモンバランス

    月経前の約2週間、つまり排卵があってから次の月経が始まるまでを『黄体期』と呼びます。この時期に分泌される黄体ホルモンには男性ホルモンと同じように、皮脂の分泌を高める働きがあるため、『黄体期』にはニキビができやすくなったり、悪化しやすくなります。また、月経前は、不眠症がちだったり、ストレスがたまったりと、ニキビに悪いことが多く起きます。また月経が不順な人は、黄体ホルモンのバランスがくずれて、ニキビができやすい状態になります。

  2. 便秘症
    便秘になると消化された食物が腸内に長く滞留し、分解物が異常発酵し有毒物質を発生します。有毒物質が腸内から吸収されると、ニキビが悪化してしまいます。また黄体ホルモンには、大腸の動きを抑制する作用がありますので、月経前の時期には便秘傾向になりやすいので、普段から注意が必要です。
  3. ストレスや疲労
    強いストレスがかかると、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモン(ステロイド)」が分泌されます。これが男性ホルモンと同じような働きをする「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌を促進するといわれています。これが皮脂の増加をひき起こし、ニキビが出来やすくなります。
  4. 皮膚の乾燥
    肌を乾燥から守るために、皮脂が分泌されています。洗顔し過ぎると皮脂が減少し、肌はかえって乾燥してしまいます。肌を乾燥から守ろうとして、逆に皮脂がどんどん分泌され、ニキビの悪化につながります。
  5. 日焼け
    日焼けをすると、防御しようと肌表面の角質が厚くなり毛穴をふさぐために、コメドの数が増えて、ニキビを悪化させます。
    紫外線によってダメージを受けた角質細胞がひからびて、肌のバリア機能が低下します。
    紫外線でメラニンが増えやすくなり、ニキビ跡がより濃いシミになりやすくなります。
    紫外線の影響によって、炎症を起こし始めた毛包に活性酸素が増え、毛包が内側から傷めつけられます。活性酸素が増えると周辺の健康な細胞まで刺激して炎症を起こし、新たなニキビの原因となります。
  6. 脂っこい食事や、甘いもののとりすぎ・偏った食事
    バランスの良い食事をとらないと、ニキビの原因となります。とくにビタミンは大切です。
    ビタミンB2は皮膚や粘膜を保護するはたらきがあります。ビタミンB2は、レバー、牛乳、ほうれん草、さば、うなぎ、焼き海苔、干ししいたけ、ワカメ、卵などに多く含まれています。
    ビタミンB6は皮膚の健康を保つために必要なビタミンで、皮膚の抵抗力を強め、カブレやニキビを予防します。ビタミンB2との併用は、いっそう効果的です。ビタミンB6は、レバー、豆類、穀類、いわし、さば、まぐろ、卵、鶏肉などに、多く含まれています。
    ビタミンCはニキビあとの色素沈着を防ぐのに有用です。ビタミンCは、野菜類、果物類に多く含まれています。飲酒はB2の体内への吸収を阻害しますので、注意が必要です。また過度の飲酒は肝臓の機能を低下させるため、各種ビタミンの貯蔵能力が低下し、結果的に皮膚の代謝機能を阻害し、ニキビを悪化させます。
  7. 過度のダイエット
    脂肪細胞からも、女性ホルモンは産生されています。過度のダイエットで体脂肪が極端に減少すると、女性ホルモンの低下によりニキビが出来やすくなります。
  8. 間違ったスキンケア
    メイクやメイクを落とすために使用するクレンジング剤が毛穴に残っていると、毛穴に炎症を起こしたり、つまりの原因になります。メイクをしたまま寝てしまうと、ニキビの悪化につながります。

など様々です。

■ 皮膚科以外の治療
治療は勿論、皮膚科が主体となります。しかし、難治性ニキビの原因の一つに、男性ホルモンと女性ホルモン(黄体ホルモンと卵胞ホルモン)のバランスの崩れが考えられており、ホルモン治療が試みられています。

  1. 低容量ピル
    低用量の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合薬であるピルを使用します。しかし、黄体ホルモンには男性ホルモン様作用もあるため、使用するピルの種類によってはニキビが悪化する可能性があります。当クリニックでは男性ホルモン作用の最も少ない低容量ピルを処方しています。適切な内服によって8−9割以上の女性に効果があります。特に月経不順のある方・月経痛の強い方・月経量の多い方・月経前症候群の方では、月経に伴う不快症状の緩和にもなりますので一度ご相談下さい。
  2. 抗男性ホルモン剤
    利尿剤であるスピロノラクトンには抗男性ホルモン作用があり、諸外国においては非常に高い効果が報告されています。高カリウム血症など重篤な副作用が出現する可能性があり、定期的な血液検査が必要です。特にあごのラインにニキビのある方には効果があります。腕や脚のムダ毛にも効果があるとされています。