月経異常

■ 正常月経と月経異常
<正常月経>
1.月経持続日数  :3〜7日
2.月経周期日数  :25〜38日
上記1と2を満たす場合は正常月経と定義されます。

■ 月経が1−2日で終わってしまう ・・・ <過短月経>
・月経日数が短いので、出血量も少ないことが多いのが特徴です。
・不妊症の原因となる無排卵性月経の可能性がある他、器質的な病気がもとになっていることも考えられます。
・着床時出血の可能性もあります。通常、受精というのは排卵直後に卵管内で起こりますが、受精をすると受精卵はゆっくりと卵管の中を移動して、およそ1週間後に子宮の中へたどり着きます。そして受精後およそ12日後には子宮内膜の中に潜り込みます。この時に少量の出血を起こすことがあり、これがほぼ予定月経の頃に重なり短期間だけ少量出血することがあります。

■ 月経が8日以上ダラダラ続く ・・・ <過長月経>
・切迫流産・流産の可能性がありますので、妊娠の可能性がある場合には、尿検査で妊娠反応を調べます。
・視床下部—下垂体—卵巣系のホルモンバランスの乱れから来る場合があります。精神的・身体的ストレスなどによるものがほとんどですので、まずは原因を除去できるように考慮することが大切です。
・出血量が多い場合は子宮筋腫や子宮内膜症などの可能性があります。
・少量の出血が10日以上続く場合は無排卵性月経の可能性が考えられます。無排卵性月経では、月経周期が不順になります。
・更年期近くになると「月経が止まらない」ということはよく見られます。それまで順調に月経が来ていても、ある日突然このような症状が起こります。月経不順や不正出血を繰り返しながら、やがて月経が来なくなるという形が最も多いものです。しかし更年期というのは個人差が大きく、標準的な終わり方はありません。

■ 月経の周期が24日以内です ・・・ <頻発月経>
月経周期が24日以内で、すぐに次の月経がきてしまうものを頻発月経といいます。排卵のあるものと無排卵性のものとがありますが、とくに月経周期が15日〜17日と短い場合、無排卵性の頻発月経である可能性が高くなります。また、その周期の短さから、月に2—3回月経が起こることもあり、長期に渡れば出血量も多くなるので、貧血(鉄欠乏性貧血)を合併します。

■ 月経の周期が39日以上です ・・・ 稀発月経
毎回の月経と月経の間が39日以上あくものを稀発月経といいます。原因の一つとして、月経から排卵までの日数が長い遅延排卵があげられます。放置すると無月経になってしまう場合もあるので、基礎体温を記録して、早めの受診をお勧めします。

■ ナプキンとタンポンを併用しても漏れるほど、出血量が多い ・・・ 過多月経
明確な定義はありませんが、多量に出血する日が3日以上続いたり、レバーのような固まりがいくつも出るなど貧血をおこしてしまうほど出血量が多い場合を過多月経と呼びます。
たまたま今回だけ多いという場合に考えられるのは、精神的・肉体的ストレスや体調不良などによるケースです。
また、妊娠ごく初期での切迫流産や流産という場合がありますので、尿検査で妊娠反応を調べる事もあります。
毎回出血の量が多いという場合には、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜増殖症などの疾患が疑われます。出血量が多くなるため鉄欠乏性貧血を合併しやすくなります。
その他、甲状腺機能低下症などのホルモン分泌異常の可能性があります。

■ 出血量が極端に少ない ・・・ <過少月経>
出血量が極めて少なく、茶色のおりもの程度の月経血しか見られない場合を過少月経といいます。月経期間も1日、2日と極端に短くなることが多く、原因として、子宮の発育不全やホルモンの分泌異常、無排卵などが考えられます。

■ これまであった月経が3ヶ月以上ない ・・・ <続発性無月経>
妊娠・授乳・閉経を除き、3ヶ月以上月経が起こらない状態を、続発性無月経と言います。
環境の変化や精神的な部分が原因になっている場合も多く、過度のダイエット、拒食症、過食症、家庭・仕事・子育てのストレス、激しい運動などがあげられます。
その他、無排卵、多のう胞性卵巣(PCO)、子宮の病気、下垂体の腫瘍、糖尿病、甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンの異常、薬の副作用(胃薬、降圧薬、精神神経科の薬など)などがあります。

■ 月経のとき以外に出血がある ・・・ <不正出血>
不正出血には、「妊娠にともなう出血」「器質性出血」「機能性出血」などがあります
① 妊娠にともなう出血
妊娠初期、流産、子宮外妊娠などの可能性があります。いずれにしても、妊娠の可能性があれば尿検査で妊娠反応を調べます。
② 器質性出血
膣炎や膣粘膜びらんによる出血:おりものが多いと思っていたところへ不正出血があった場合、膣炎や膣粘膜びらんによる出血の可能性があります。
子宮頸管ポリープ:不正出血の原因として比較的頻繁に見られるものです。多くのポリープは外来で切除できます。
子宮頚管炎:クラミジア感染症などが原因となります。
子宮筋腫:筋腫分娩(子宮筋腫が膣に出てくるタイプ)を除けば、子宮筋腫があるだけではあまり不正出血は起こしません。しかしストレスなどの原因によりいったん出血すると、その出血がかなり多くなる場合があります。
子宮癌:子宮癌には子宮頸癌と子宮体癌があります。年1回の子宮癌検診をお勧めします。
などが代表的な原因です。
③ 機能性出血
視床下部—下垂体—卵巣系のホルモンバランスの乱れによる出血:精神的・身体的ストレスによるものが多く、月経周期のどの時期においても出血する可能性があります。まずは原因を除去できるように心がけましょう。
排卵期出血:排卵期には卵巣から放出される女性ホルモン(エストロゲン)が一時的に減少し、それに伴って子宮内膜から少量の出血が起こる場合があります。排卵期出血の場合の出血量は少なく、また2〜4日間で止まってしまうのが普通です。排卵が起こってから次の月経が来るまで、おおよそ2週間かかるのが普通ですから、月経の周期が順調な人であれば、次の予定月経の約2週間前頃に少量の出血があった場合には、排卵期出血と考えられます。
無排卵性出血:排卵期には一時的にエストロゲン量が減少してきますが、排卵がきちんと起こらないとそのままエストロゲン量は減少した状態になり、これが原因で不正出血を起こすようになります。場合によってはそのまま不正出血が持続して止まらなくなることもあります。
黄体期出血:黄体機能不全により排卵後の黄体が早期に退行して、女性ホルモンが低下するために生じる出血です。
更年期出血:更年期近くになると、不正出血や月経不順はよくみられます。40歳を過ぎると月経周期が短くなり、この頃から月経前後の出血がみられるようになります。その後、次第に無排卵になり不正出血を起こしやすくなります。更年期かどうかは、血液検査にて脳下垂体より分泌される性腺刺激ホルモン(FSH、LH)や卵巣より分泌される女性ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン)を調べて判定します。
その他:外傷による出血、経口避妊薬内服中、ホルモン補充療法中、乳癌ホルモン療法中、特発性血小板減少性紫斑病・再生不良性貧血・白血病などの血液疾患なども不正出血の原因となります。