月経痛

■ はじめに
月経(いわゆる生理)が始まる直前か、月経中に起こる下腹痛、腰痛などを総称して月経痛(生理痛)といいます。症状の種類や程度は人それぞれ異なりますし、同じ人でも周期によって違います。月経痛の程度が強くて、日常生活に支障のある場合、たとえば学校や会社に行けない、寝込んでしまうような状態のことを特に”月経困難症“といいます。

■ 頻度は
生理痛は、初潮の時には約半数の女性が感じていますが、その後徐々に増えて初潮後数年すると約80%にもなります。
また月経困難症も初潮後に徐々に増加していきますが、おおよそ5人に1人位の割合でみられます。

■ 年齢による変化
思春期など10代は、子宮や卵巣が未成熟なので月経痛が起こる場合がほとんどです。
さらに20代になるとホルモン分泌が盛んになり、月経痛が起こりやすくなります。
30代になると月経痛が軽くなる傾向がありますが、今度は子宮内膜症や子宮筋腫など、月経痛を引き起こす病気の発症率が増加してきます。

■ どうして月経痛になるのですか?
子宮内膜は排卵後から、受精卵が着床しやすいようにフカフカのベッドのように厚くなっていきます。
妊娠しなければ出血と共に子宮内膜が剥がれ落ち、これが月経となります。子宮内膜を体外に排出するためには子宮の収縮が必要です。子宮を収縮させるためにはプロスタグランジンという物質の分泌が必要ですが、この物質が子宮を過度に収縮させたり、子宮の周りにある腸の動きを活発にさせるために、下腹部痛、腰痛などが起こるとされています。また若い人の場合、子宮が未成熟で子宮頸部が狭く、月経血がスムーズに流れないことも原因となることもあります。
日常生活に支障をきたす月経困難症では、子宮内膜症、子宮線筋症、子宮筋腫などが原因となっている事が多く、婦人科への受診をお勧めします。

■ 月経困難症(日常生活に支障のある月経痛)のタイプと治療
●原発性月経困難症
明らかな原因がないのに、強い月経痛があるタイプです。普通、初経(初潮)後1〜2年して排卵が起こるようになってからみられます。若い人に多いタイプですが、40代の方にもみられます。
症状の特徴は、月経が始まる数時間前から月経開始直後に痛みが出現し、2〜3日間痛みが続きます。
治療にはプロスタグランジンを減らす鎮痛薬などを使います。市販の生理痛の薬もほとんどがこのタイプで、80%位の方に効果があります。その他の薬として、低用量ピル(自費)も90%位の方に効果があります。ピルをおすすめできない方には漢方薬を併用することもあります。

●続発性月経困難症
月経痛を起こす原因となる病気があるタイプです。
月経痛が月経開始の1〜2週前から痛み始める事や、月経の出血が無くなっても痛みが続くことがよくあります。最も多い原因は、子宮内膜症です。近年 子宮内膜症の女性が増加してきていますが、その多くは20〜30才代で発症し、放っておくと年を追うごとに症状が悪化、卵管癒着や卵管閉塞による不妊の原因になる場合があります。がんのように悪性の病気ではないので、生命に直接影響する病気ではありませんが、場合によっては手術で子宮や卵巣を摘出しなければならないこともあります。
その他、子宮頚管狭窄、子宮奇形、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、悪性腫瘍なども原因となります。いつもの月経痛と違う、月経痛が回を重ねるたびにひどくなるようなときは、早めに婦人科を受診する事をお勧めします。