女性とうつ病

■ はじめに
現代社会は、国際化・核家族化・情報化などの変化を反映して、様々なストレスが増えてきています。その中でもうつ病は徐々に増えており、社会問題として取り上げられています。
うつ病の多くは、抑うつ気分、意欲や興味の減退などの精神症状だけではなく、全身倦怠感、不眠、頭痛、食欲不振、体重減少、めまい、しびれなどの身体症状を伴います。そのため、うつ病の約8割は一般内科を受診しています。

■ 頻度と性差
WHO(世界保健機構)によると、うつ病の発症頻度は男性5-12%、女性10-24%で、女性は男性の約2倍程度多く発症しています。うつ病がなぜ女性に多いのか明らかな原因は不明ですが、月経周期に伴うホルモン変化、出産前後のホルモン変化、閉経前後のホルモン変化など生物学的要因や、仕事と家庭の両立、育児に対する不安、近隣付き合いの問題など社会学的な要因が考えられています。

■ 現代のうつ病の特徴 ・・・軽症のうつ病(軽症うつ病、気分変調障害、仮面うつ病)
うつ病といえば、見るからに元気がなく、いかにも憂うつな表情で、口数も少なく、外出も出来ず、自殺願望も強い状態であると思われがちでした。しかし、これはかなり重症なケース(大うつ病)であり、多くを占める軽症うつ病(気分変調障害や仮面うつ病とも呼ばれます)の多くは、穏やかに話をされます。家族や同僚ばかりではなく、医師さえも本人が苦しんでいる事に気づかない事すらあります。これらの患者さんは、身体症状の訴えが中心であり、医師が時間をかけて慎重に聞き出さないとうつ症状が見逃されてしまいます。特に日本人では抑うつ気分を訴えない患者が多いのが特徴です。この様に、辛いけれども学校や会社、家庭では何とか日常生活をこなし、軽いうつ状態 が2年も3年も続くといったタイプの患者さんが増えています。

■ うつ病の原因は?うつ病
うつ病は、心理的ストレスと非常に深い関連があると考えられています。実際、その発現には、多くの場合、心理的あるいは社会的ストレスが誘因として関与していると言われています。うつ病の真の原因としては、現在のところまだ解明されていない部分も多いのですが、現段階では脳内の神経伝達物質に関する仮説的な原因論が広く知られています。この仮説では、脳内にある神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンを分泌する神経細胞が機能障害を起こし、情報伝達の際に脳内のセロトニンやノルアドレナリンの放出量が減少することによって起こると考えられています。そのため、うつ病の治療では多くの場合、このセロトニンやノルアドレナリンの量を増加させる「抗うつ薬」が用いられる事が多くなっています。また、これ以外に遺伝的要素や性格・身体的・精神的問題が深く関わっていることも分かってきています。しかし、遺伝的要素を受け継いだ人のすべてがうつ病になる訳ではありません。うつ病の場合、その遺伝的基盤以外に環境や性格という要素も重要と考えられます。遺伝的要素が強い場合には、誘因がなくても発病すると言われていますが、遺伝的要素が弱い場合は、性格・身体的・精神的問題が誘因となって発病することもあるようです。身体的・精神的問題とは、過労や職場移動、職場環境、経済問題、進学、結婚、妊娠、出産、精神的ショック、近親者との死別、転居、家庭内葛藤、身体疾患などを指します。

■ うつ病になりやすいのはどんな人?
メランコリー親和型性格と呼ばれ
①まじめ ②勉強熱心・仕事熱心 ③几帳面 ④仕事や家事を人任せにできない
⑤人にどう見られているか非常に気になる ⑥正義感・責任感が強い ⑥融通がきかない
⑦周囲にあわせる
などの特徴を持つ性格が見られます。

■ うつ病の症状

■ うつ病と鑑別が必要な病気
薬剤の副作用で「うつ病」となる可能性がありますので、普段から内服している薬がないかどうか確認する必要があります。日常でよく経験する薬剤に、降圧薬(β遮断薬)と胃酸の分泌を抑制する薬(H2受容体拮抗剤)、B型肝炎やC型肝炎に使用されるインターフェロン、抗パーキンソン薬、副腎皮質ホルモン(ステロイド)などがあります。これらの薬剤を内服している場合には、薬剤惹起性うつ病の可能性も疑われます。

うつ病

その他、プレ更年期、更年期障害、甲状腺機能低下症(橋本病など)、貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、慢性疲労症候群や線維筋痛症候群などの膠原病類似疾患、糖尿病なども「うつ病」との鑑別が必要です。

■ うつ病の治療法
うつ病 の治療には、1に 休養 、2に 薬物療法 などを組み合わせて行なわれます。
【休養】
うつ病 の患者さんは、「周囲に迷惑をかけられない」という気持ちの強い人が多く、仕事などを休むことに難色を示しがちです。可能であれば思い切って休み、心身の休養を取って下さい。
【薬物療法】
最近では効果が高く、安心して服用できるものが多く使われています。うつ病は、 脳内にある神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンを分泌する神経細胞が機能障害を起こし、情報伝達の際に脳内のセロトニンやノルアドレナリンの放出量が減少することによって起こると考えられています。そのため、このセロトニンやノルアドレナリンの量を増加させる「抗うつ薬」が用いられる事が多くなっています。
薬の副作用として多いものに、口渇、嘔気、便秘、排尿障害、尿閉などがあります。また、症状がよくなったからといって勝手に服用を中止すると、症状の悪化を招く例もありますので自己判断は禁物です。うつ病は、 脳内にある神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンを分泌する神経細胞が機能障害を起こし、情報伝達の際に脳内のセロトニンやノルアドレナリンの放出量が減少することによって起こると考えられています。そのため、このセロトニンやノルアドレナリンの量を増加させる「 SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤 )」や「 SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤) 」が用いられる事が多くなっています。

■ 主な抗うつ薬

分類 一般名
第1世代の抗うつ薬 三環系抗うつ薬 イミプラミン
クロミプラミン
トリミプラミン
アミトリプチリン
ノルトリプチリン
第2世代の抗うつ薬 ロフェプラミン
アモキサピン
ドスレピン
四環系抗うつ薬 マプロチリン
ミアンセリン
セチプチリン
第3世代の抗うつ薬 SSRI フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン
その他 トラゾドン
スルピリド
第4世代の抗うつ薬 SNRI ミルナシプラン