女性と不眠症

■ はじめに
厚生労働省は『健康づくりのための睡眠指針検討会』を2003年2月に設置しました。日本の睡眠の現状報告によると、平均睡眠時間は6.6時間だそうです。体が必要とする睡眠時間は年齢により異なり、10代は8〜10時間、20代〜50代は6.5〜7.5時間、60代以降は平均6時間弱と報告されています。「睡眠時間は長ければ長生きする」という単純なものではありません。

■ 不眠症の4つのタイプ
① 入眠障害 : 床に入ってから寝付くまでに1時間以上かかる。
② 中途覚醒 : 睡眠中に2回以上目覚め、その後なかなか寝付けない。
③ 早朝覚醒 : 通常の起床時刻より、2時間以上早く目覚める。
④ 熟睡障害 : よく眠ったとの実感がない。
※ 該当するタイプが、複数にまたがることも少なくありません。

■ 性差と頻度
不眠で悩んでいる人は成人の約10−25%もおり、男女ともに加齢とともに不眠の傾向が高くなります。
寝付きが悪い(入眠障害)タイプは、女性に多いと報告されています。一方で、眠りの途中で目が覚めたり(中途覚醒)、朝早く目覚めてしまう(早朝覚醒)タイプは、20台において男性よりも女性に多いと報告されています。また中途覚醒は、運動習慣のある人に比べて、ない人は1.3倍も多いと報告されています。

残念ながら日本の家庭においては、生活リズムを作る中心は大部分が男性です。よって女性配偶者の睡眠は、男性の睡眠習慣の影響を受けやすくなります。専業主婦ばかりではなく勤労女性においても、女性の睡眠は男性の就寝時間や起床時間に左右され、この事が睡眠障害につながっているケースが少なくありません。

■ 厚生労働省「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」による12の指針

  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
  2. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
    睡眠時間をしっかりとろうとして、まだ眠くないのに早めに床につくことはよくありません。
    かえって、ねむれなくなります。別の言い方をすれば、「早寝すれば 早起きできる」わけではないのです。
  3. 光の利用でよい睡眠
    目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオンにする
    夜は明るすぎない照明を
  4. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法を
    就床前4時間のカフェイン摂取を避ける、就床前1時間の喫煙は避けるなど
    軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、アロマなど
  5. 同じ時刻に毎日起床
    その日の就床時刻は起床時刻に左右されます。「早寝」が「早起き」につながるのではなく、「早起き」が「早寝」につながるのです。
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
    朝食は心と体の目覚めに重要です。
    適度な運動習慣は熟睡を促進します。
  7. 昼寝をするなら、15時前の20〜30分
    長い昼寝はかえって不眠のもとです。
  8. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
    背景に睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れている可能性があります。
  9. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもとになります
  10. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
    寝床で長く過ごしすぎると、かえって熟睡感が減ります。
  11. 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
    睡眠時間が十分なはずなのに、日中の眠気が強い人は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
    床に入る前に服用し、アルコールとの併用はしない

■ 睡眠薬について
不眠の原因を取り除き、生活習慣や睡眠環境の改善をしても充分な効果が得られないときに、睡眠障害改善剤(以後睡眠薬)による治療が行われます。不眠には入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早朝覚醒がありますが、薬剤もその症状によって使い分けます。
睡眠薬は半減期によって、超短時間型、短時間型、中間作用型、長時間型の4つに分けられます。原則的には、超短時間型は入眠障害、短時間型は入眠障害+中途覚醒、中間作用型または長時間型は中途覚醒から早朝覚醒に使用されます。
睡眠薬の使用に対して強い不安を持つ人もいますが、現在使用されている睡眠薬は安全性が高いのが特徴です。

作用時間による分類 一般名 臨床用量 消失半減期
超短時間
作用型
ゾルビデム 5 〜 15mg 2時間
トリアゾラム 0.125 〜 0.5mg 2〜4時間
ゾビクロン 7.5 〜 10mg 4時間
短時間
作用型
エチゾラム 1 〜 3mg 6時間
ブロチゾラム 0.25 〜 0.5mg 7時間
リルマザホン 1 〜 2mg 10時間
ロルメタゼパム 1 〜 2mg 10時間
中間
作用型
ニメタゼパム 3 〜 5mg 21時間
フルニトラザパム 0.5 〜 2mg 24時間
エスタゾラム 1 〜 4mg 24時間
ニトラゼパム 5 〜 10mg 28時間
長時間
作用型
フルラゼパム 10 〜 30mg 65時間
ハロキサゾラム 5 〜 10mg 85時間
クアゼパム 15 〜 30mg 36時間