女性とビタミン

■ はじめに
ビタミンは体内で十分に合成することができないため、正常な生理機能を保つために食物などから摂取しなければならない必須栄養素です。
ビタミンは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられますが、脂溶性ビタミンは体内蓄積されやすいので、欠乏症が起こりにくい反面、大量にとった場合には過剰症が起きて健康を害することがあります。反対に、水溶性ビタミンは、熱に弱く水に溶けやすいため、大量に摂取しても尿中に排泄されるので、過剰症はほとんどありません。
また妊娠初期では「葉酸を十分に摂取すること」、逆に「ビタミンAを過剰摂取しないこと」が非常に大切ですので、妊娠を考えている女性は普段から注意が必要です

■ 脂溶性ビタミン・・・主に過剰症に注意が必要

ビタミンA 役割 視力に重要、皮膚や粘膜の保護
欠乏症 夜盲症、角膜乾燥症、角化症
過剰症 頭痛、めまい、発熱、吐き気、顔面のむくみ、脱毛、皮膚はく離や痒み、四肢の痛みや腫れ、食欲不振
*妊娠初期に、薬やサプリメントから大量にビタミンAを摂取すると、赤ちゃんの催奇形性が増えるので注意が必要です。いくつもの疫学調査や症例報告などから、妊娠中のビタミンAの多量摂取が奇形の発現率を高めることが分かっています。どの程度の量からかは必ずしもはっきりしませんが、1995年に1日1万単位以上とする報告がされ論議をよびました。高めの報告としては、1日4万単位以上とする研究もあります。食べ物の中にもビタミンAがたくさん含まれるものがあり、妊婦初期の3カ月間位は、レバーの過剰摂取にも注意が必要です。普通に食事がとれれば、ビタミンAが欠乏することはまずありません。
食品 レバー、うなぎ、マーガリン、緑黄色野菜(ニンジン、パセリ)
ビタミンD 役割 カルシウムの吸収促進、骨を作る細胞の活性化
欠乏症 くる病、骨・歯の発育不全、骨痛、筋肉痛、骨粗しょう症
過剰症 高カルシウム血症、腎臓結石、興奮、不眠、頭痛、食欲不振、悪心、吐き気、脱力、倦怠、疲労、頭痛、口の渇き、意識混濁、下痢
食品 魚類(イワシ、カツオ、ウナギ)、レバー、卵、マグロ、さつまあげ、シラス干
ビタミンE 役割 細胞膜の機能の維持 脂肪代謝に関係
欠乏症 末梢循環不全、神経伝達の低下、運動機能の低下
過剰症 ほとんど認められないが、時に下痢、腹痛、疲労感、頭痛など
食品 植物油、大豆、小麦胚芽、パン、緑黄色野菜
ビタミンK 役割 血液凝固因子の合成、骨の形成
欠乏症 出血傾向、骨粗しょう症
過剰症 溶血性貧血、吐き気、軟便
食品 K1は緑色葉菜(ホウレン草、ブロッコリー)海藻類、お茶
K2は納豆、肉、卵、牛乳、チーズ

■ 水溶性ビタミン・・・主に欠乏症に注意が必要

ビタミンB1 役割 糖分やアルコールの分解、神経機能の維持
欠乏症 脚気、皮膚炎、下痢、痴呆、アルコールの飲み過ぎによるB1欠乏では脳症
過剰症 ふるえ、脈拍の増加、アレルギー症状
食品 強化米、玄米、豚肉、ゴマ、大豆、落花生、豆類
ビタミンB2 役割 アミノ酸の代謝に関係、皮膚や粘膜の保護
欠乏症 口角炎、舌炎、口内炎、眼の疲れ、皮膚のかさかさ
過剰症 吐き気、軟便、下痢
食品 レバー、うなぎ、牛乳、卵、緑色葉菜(しその葉、ホウレン草)
ビタミンB6 役割 細胞膜の機能の維持 皮膚や粘膜の保護、神経機能の維持
欠乏症 口角炎、舌炎、口内炎、皮膚のかさかさ、末梢神経炎(手足のしびれ)、貧血
過剰症 知覚異常(痛みや振動感の異常)、疲労、神経過敏
食品 肉類、魚類、米、パン、豆類、バナナ、ピーナッツ、レバー
ビタミンB12 役割 神経機能の維持、造血
欠乏症 貧血、末梢神経炎(手足のしびれ)
過剰症 ニキビ、赤血球増多、末梢血管の血栓
食品 レバー、貝類(カキ、ハマグリ)、卵、魚類、肉類
ビタミンC 役割 コラーゲンの合成、免疫機能の増強
欠乏症 歯肉の出血、出血班(毛細血管がもろくなる)、ニキビ
過剰症 吐き気、下痢、頭痛、倦怠感、不眠
食品 緑色野菜(パセリ、ピーマン、ブロッコリー)果物(柑橘類、キウイ、イチゴ)
葉酸 役割 核酸や蛋白の合成
欠乏症 貧血など
*厚生労働省は2000年に「妊娠可能年齢の女性は食事に加えて栄養補助食品として1日400μg(=0.4mg)以上、1,000μg(=1.0mg)以下の葉酸を摂取するように」と通知を出しています。これは欧米諸国の研究で、妊娠する1ヶ月前から妊娠初期(妊娠12週)まで、葉酸を1日400μg摂取すれば、新生児の二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症率が約70%下がることが明らかになったためです。妊娠可能な女性は葉酸が不足しないよう注意しましょう。
過剰症 吐き気、下痢、頭痛、倦怠感、不眠
食品 緑色野菜(パセリ、ピーマン、ブロッコリー)