女性と骨粗鬆症

■ 骨粗鬆症とはどのような病気なの?
骨はからだを支える他にカルシウムの貯蔵庫としての役割を担っており、たくさんのカルシウム(骨重量の約50%)が含まれています。骨は作られる一方で破壊(吸収)も同時に進行しており、そのバランスを保っています。この骨形成と骨吸収のバランスが崩れて骨吸収が亢進すると、骨は非常にもろい状態になり折れやすくなります。この状態が骨粗鬆症です。

■ 骨粗鬆症は女性に多い
骨粗鬆症は圧倒的に女性に多い病気です。これは、女性ホルモンであるエストロゲンが骨代謝に大きな役割を担っているからです。エストロゲンには骨形成を進め、また骨吸収(骨破壊)を抑制する作用があります。女性の卵巣機能は50歳をはさんだ前後10年間に急激に低下し、エストロゲンが欠乏状態となり閉経を迎えます。エストロゲンが低下すると骨吸収(破壊)の亢進した状態が継続し、その結果として骨粗鬆症が進行します。よって閉経期の40〜50歳代から急激に骨量が減少し、60歳代では2人に1人、70歳以上になると10人に7人が骨粗鬆症を起こすような状態になっています。

■ 原因は?

加齢 歳をとるとともに、からだの中のホルモンが変化するために、骨に含まれるカルシウムなどの量(骨量)は若年期をピークに年齢とともに減ってきます。その他、胃酸分泌の低下や腸での吸収能の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加なども原因となります。
女性、閉経 もともと女性の最大骨量は男性より低く、また閉経前後からエストロゲンが急激減少するため、さらに骨量が低下します。そのため、女性は男性より骨粗鬆症になる危険性が高く、より若い年齢から骨粗鬆症が見られます。
カルシウム不足 カルシウムは少なくとも1日約600mg、成長期の若いひと、閉経後の女性では1,000〜1,500mg が必要とされていますが、日本人は先進国と比較すると明らかにカルシウムの摂取不足が指摘されています。
ビタミンD不足 腸管におけるカルシウムの吸収にはビタミンDの作用が必要なため、ビタミンDが不足するとカルシウムを吸収することができません。
日光浴不足 ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収に不可欠なビタミンです。ビタミンDは、皮膚の中で日光の紫外線にあたると活性型のビタミンDに変化され、その機能を発揮します。そのため、日光に当たらないと腸管からうまくカルシウムを吸収することができません。
運動不足 筋肉だけでなく、骨の強さを保つためには運動も非常に大切です。スポーツに限らず日常の動作も、骨や筋肉の維持には重要です。
喫煙、飲酒 喫煙は胃腸の働きを悪くしてカルシウムの吸収を悪くすると言われています。また、過量のアルコールもカルシウムの吸収を減らして、排泄を増やします。
ストレス 過度のストレスは、腸管におけるカルシウムの吸収を抑制します。

■ 予防
多くの病気がそうであるように、骨粗鬆症も若いうちからの予防・管理が大切です。20歳頃までは成長と成熟にともない骨量は増加しますから、幼少期からのカルシウム摂取に気をつける事が重要です。日本人のカルシウム摂取は欧米の1/2-2/3程度と少なく、これは主に乳製品の摂取量の違いによります。長時間の歩行、ジョギング、階段昇降、エアロビクスなどの適度な運動、禁煙、アルコール摂取の制限、過度のダイエットをしない、過労を避けるなども予防としては大切です。

■ 薬物治療
骨粗鬆症に関する薬物治療に関する発表は海外データに依存しており、今後わが国における治療法を確立していく必要が指摘されています。これまで日本国内では、カルシウム製剤、活性型ビタミンD、ビタミンK、カルシトニンなどが使用されていましたが、骨折予防に関しては単独で使用することは現時点では推奨されていません。骨粗鬆症の治療目標を骨折予防に置くのであれば、ビフォスフォネート製剤と閉経後の女性に対する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:Selective Estrogen Receptor Modulator)が効果的です。ビフォスフォネート製剤の有用性は既に確立されていますが、この薬は空腹時にコップ1杯の水と内服しなければならなく、骨以外に対する効果は認められていません。一方、SERMの骨吸収(破壊)抑制効果はビフォスフォネート製剤に比較すると弱く、また深部静脈血栓症の合併が心配されますが、乳癌の抑制作用が指摘されています。いずれにしても、どの薬を第一選択にするかは常に議論の対象であり、今後の課題です。