膠原病とは?

■ 膠原病とは何ですか?
細菌やウイルスなどの病原体が体の中に侵入したり、正常な細胞がガン細胞に変化した時に、これらの異物を排除しようとする能力が「免疫能」です。ところが、この免疫能に異常が起きると、正常な細胞や、細胞と細胞の隙間(すきま)をうめている結合組織が、自分自身の免疫能によって間違って破壊されることがあります。この様に、自分自身の正常な組織がターゲットになり破壊されてしまう病気を「自己免疫疾患」と呼びます。特に結合組織や血管を中心に、慢性的な炎症と破壊が繰り返される自己免疫疾患を「膠原病」と呼びます。
人の体は結合組織や血管に囲まれているので、膠原病はほとんどすべての臓器に起こりうる病気です。そして、どの臓器が主に侵されているかによって、特徴的な症状が現れます。よく耳にする「関節リウマチ」は、関節を中心に炎症と破壊が起きる膠原病の代表的な疾患です。膠原病の多くは圧倒的に女性に多く発症し、妊娠や分娩を契機に発症したり悪化したりする事があります。
膠原病には、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(強皮症)、多発性筋炎/皮膚筋炎、リウマチ熱、結節性多発動脈炎の古典的6疾患の他に、混合性結合組織病(MCTD)、シェーグレン症候群、ベーチェット病、血管炎症候群など多くの類縁疾患があります。

■ 膠原病の症状は多彩です
下記の症状が持続・反復して出現する場合には膠原病を疑う必要があります。

1. 全身性症状 : 持続的な発熱(微熱〜高熱)、全身倦怠感、易疲労感、体重減少、リンパ節腫脹など
2. 皮膚・粘膜症状 : 発疹、日光過敏、皮膚が硬くなる、レイノー現象、口内炎、陰部潰瘍、脱毛など
 レイノー現象:冷たい水や風に触れたりすると手指が蒼白になる現象
3. 関節症状 : 朝のこわばり、関節痛、関節の変形など
4. 筋症状 : 筋肉痛、筋力低下など
5. 神経・精神症状 : 知覚障害、精神症状など
6. 心血管症状 : 胸痛、高血圧、心不全症状など
7. 肺症状 : 呼吸困難、胸痛など
8. 消化器症状 : 口が渇く、唾液が出ない、胸焼け、嚥下困難、腹痛、腹部膨満感、血便など
9. 腎尿路系症状 : 蛋白尿、血尿、浮腫など
10. 眼症状 : 乾燥感、眼の痒みや痛み、視力障害など

■ 膠原病を疑った場合、どのような検査をしますか?
膠原病を疑わせる身体所見を認めた場合には、まず基本的な検査(スクリーニング検査)を行って病気の絞り込みを行います。膠原病で認められる検査異常は以下の3つに大別されます。

① 慢性炎症に由来する炎症反応の亢進
炎症反応のマーカーである、赤沈、CRP、血清アミロイドA蛋白(SAA)、血清蛋白分画(γグロブリン分画)などを調べます。

② 免疫異常
間接蛍光抗体法による抗核抗体、リウマトイド因子、免疫グロブリン、血清補体価、免疫複合体などを調べます。

③ 臓器病変に基づく検査異常
臓器障害のスクリーニング検査としては、尿検査、血算(白血球、赤血球、血小板)凝固系検査、生化学検査(肝機能、腎機能など)、胸部レントゲン、手指レントゲン検査などを行います。

■ 抗核抗体について
抗核抗体は膠原病を診断する上で非常に重要な検査です。抗核抗体の存在は何らかの自己免疫疾患の存在を示唆しています。通常は、間接蛍光抗体法による抗核抗体(FANA)を測定法します(基準値は40倍未満)。女性では、健常者においても10〜20%の頻度で抗核抗体陽性を示しますが、健常者の抗体価は通常80倍以下と低値です。抗核抗体価が160倍以上の場合には二次検査として、疾患特異的自己抗体の血液検査を追加します。この特異的自己抗体が、確定診断のための重要な手がかりとなります。

①抗核抗体が陽性で、特異的自己抗体のある膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE):抗DNA抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体
全身性硬化症(強皮症):抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNP抗体
CREST症候群(限局型全身性硬化症):抗セントロメア抗体
多発筋炎/皮膚筋炎:抗Jo-1抗体
混合性結合織病(MCTD):抗RNP抗体
シェーグレン症候群:抗SS-A抗体、抗SS-B抗体

②抗核抗体は陰性であるが、特異的自己抗体のある膠原病
顕微鏡的多発動脈炎(PAN):MPO-ANCA
Wegener肉芽腫症:PR3-ANCA
抗リン脂質抗体症候群:抗CL-β2GPI抗体

③抗核抗体も特異的自己抗体も陰性の膠原病
古典的結節性多発動脈炎(PN)、ベーチェット病など

■ 最終的な診断はどのような検査が必要ですか?
臨床症状や上記の検査などから特定の膠原病が強く疑われる場合には、さらに詳しい検査をします。超音波検査、心電図、呼吸機能検査、サーモグラフィー、各種レントゲン検査、CT、MRI、MRA、消化管検査、血管造影検査、組織生検による顕微鏡検査などを行い確定診断します。