肝臓系検査

総蛋白(mg/dl)

血液中の総たんぱくの量を表します。
数値が低い場合は栄養障害、肝硬変、ネフローゼ症候群、がんなど、
高い場合は多発性骨髄腫、慢性炎症、高度脱水などが疑われます。

異常 要注意 基準値 要注意 異常
5.9 以下 6.0 〜 6.4 6.5 〜 8.0 8.1 〜 9.0 9.1 以上

アルブミン(mg/dl)

血液蛋白のうちで、最も多く含まれるのがアルブミンと呼ばれる蛋白です。
アルブミンは肝臓で合成されます。
肝硬変などの肝臓障害、栄養不足、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症などで減少します。

基準値 要注意 異常
4.0 以上 3.6 〜 3.9 3.5 以下

AST(GOT)と ALT(GPT)

AST(GOT)ALT(GPT)は、心臓、筋肉、肝臓などの細胞に含まれている酵素です。ALT(GPT)は特に肝臓に多く含まれています。細胞が破壊されると、血液中に流れ出すために数値が高くなります。

数値が高い場合は急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎などが疑われます。

基準値 要注意 異常
AST 35 以下 36 〜 49 50 以上
ALT 35 以下 36 〜 99 50 以上

AST(GOT)のみが極端に高い場合は心筋梗塞、筋肉疾患などが考えられます。

γ-GTP

γ-GTPは、肝臓や胆道などに異常があると上昇します。

数値が高い場合は、アルコール性肝障害、慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害 などが疑われます。

基準値 要注意 異常
55 以下 56 〜 99 100 以上

腎臓系検査

クレアチニン(Cr)

アミノ酸の一種であるクレアチンが代謝されて出来る老廃物です。筋肉量が多いほどその量も多くなるため、基準値に男女差があります。腎臓でろ過されて尿中に排泄されますので、腎臓の機能が低下すると数値が上昇します。

基準値 要注意 異常
男性 1.1 以下
女性 0.8 以下
男性 1.2 〜 1.3
女性 0.9 〜 1.0
男性 1.4 以上
女性 1.1 以上

尿酸(UA)

尿酸は、たんぱく質の一種であるプリン体という物質が代謝されて出来る物質です。高い数値の場合は、高尿酸血症と呼ばれます。高尿酸血症が続くと、関節に尿酸結晶がたまり、ある日突然関節痛を起こす事があります。これを痛風発作といいます。また、高尿酸結晶が続くと、尿路結石(腎結石や尿管結石)が出来やすくなったり、腎機能が低下したりします。

基準値 要注意 異常
7.0 以下 7.1 〜 7.9 8.0 以上

脂質検査

総コレステロール(TC)

コレステロールや体に必要なホルモンや細胞膜を作る材料として非常に大切なものですが、増えすぎると動脈硬化が進行して、脳梗塞や心筋梗塞などになることがあります。

数値が高い場合には、動脈硬化、脂質代謝異常、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、糖尿病、家族性脂質異常症などが疑われます。

低い場合は、栄養吸収障害、低βリポたんぱく血症、肝硬変、甲状腺機能亢進症などが疑われます。

要注意 基準値 要注意 異常
下記以外 139 以下 140 〜 219 220 〜 239 240 以上
閉経後の女性 149 以下 150 〜 239 240 〜 259 260 以上

*日本人間ドック学会による基準です

HDLコレステロール

善玉コレステロールと呼ばれています。コレステロールを肝臓に運び、血液中や組織のコレステロールを下げます。

数値が低いと、脂質代謝異常、動脈硬化などが疑われます。

異常 要注意 基準値 要注意
男性 35 以下 35 〜 39 40 〜 99 100 以上
女性 44 以下 45 〜 49 50 〜 109 110 以上

*日本人間ドック学会による基準です

LDLコレステロール

悪玉コレステロールと呼ばれています。
LDLコレステロールが多すぎると、血管にコレステロールが蓄積して動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性が高まります。

要注意 基準値 要注意 異常
60 以下 60 〜 139 140 〜 159 160 以上

通常の脂質検査では、総コレステロール、HDLコレステロールおよび中性脂肪(トリグリセライド)が測定されていて、LDLコレステロールは測定されていません。

LDLコレステロールの量は、LDLコレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール−(中性脂肪÷5)で求められます。

中性脂肪(TG)(トリグリセリド)

体の中でもっとも多い脂肪成分で、糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。
数値が高いと、悪玉コレステロールが血管に蓄積しやすくなります。

アルコール摂取、過食、肥満症、糖尿病、甲状腺機能低下症などでも高値になる事があります。

低値の場合には甲状腺機能亢進症、肝硬変、栄養障害などがあります。

要注意 基準値 要注意 異常
29 以下 30 〜 149 150 〜 249 250 以上

糖代謝系検査

血糖値

血糖値とは、血液中のブドウ糖の値ですが、糖は体のエネルギー源として全身に利用されます。
ブドウ糖がエネルギー源として適切に利用されていないと、血糖値は高くなります。
数値が高い場合は、糖尿病、膵臓癌、甲状腺機能亢進症状、ホルモン異常などが疑われます。

基準値 要注意 異常
109 以下 110 〜 125 126 以上

HbA1c

HbA1C(ヘモグロビン・エーワン・シー)は、過去1〜2ヶ月の血糖値の平均を反映するため、糖尿病のコントロールの状態がわかります。6.5%以上なら糖尿病と判断されます。

基準値 要注意 異常
5.8 以下 5.9 〜 6.1 6.2 以上

血球系検査

赤血球(RBC)

赤血球は、肺で取り入れた酸素を全身に運ぶ役目をしています。
赤血球の数が多い時は多血症、少ない時は貧血が疑われます。

血色素(Hb)(ヘモグロビン)

血色素は赤血球の中に含まれているヘム蛋白で、酸素と直接結合するのがヘム蛋白です。
減少している場合、貧血と診断されます。

ヘマトクリット(Ht)

血液全体に占める赤血球の割合をヘマトクリットといいます。
数値が低ければ貧血などが疑われ、高ければ多血症、脱水などが考えられます。

異常 要注意 基準値 要注意 異常
男性 赤血球
女性 赤血球
359 以下
329 以下
360 〜 399
330 〜 359
400 〜 539
360 〜 489
540 〜 579
490 〜 519
580 以上
520 以上
男性 血色素
女性 血色素
11.9 以下
10.7 以下
12.0 〜 12.9
10.8 〜 11.3
13.0 〜 16.6
11.4 〜 14.6
16.7 〜 17.5
14.7 〜 15.4
17.6 以上
15.5 以上
男性 ヘマトクリット
女性 ヘマトクリット
34.9 以下
30.9 以下
35.0 〜 37.9
31.0 〜 33.9
38.0 〜 48.9
34.0 〜 43.9
49.0 〜 51.9
44.0 〜 45.9
52.0 以上
46.0 以上

MCV・MCH・MCHC

MCVは赤血球の平均体積を表します。
MCHは赤血球に含まれる平均血色素量を表します。
MCHCは赤血球体積に対する血色素量の割合を示します。

MCVの数値が高いと、ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過剰飲酒、甲状腺ホルモン異常などが疑われます。
MCVが低いと、鉄欠乏性貧血、慢性炎症(リウマチなど)にともなう貧血、甲状腺ホルモン異常などが疑われます。

白血球(WBC)

白血球は、細菌やウィルスなどから体を守る働きをしています。
数値が高い場合は細菌感染症にかかっているか、炎症や白血病などの腫瘍の存在が疑われます。

たばこを吸っている人は高値となる場合があります。
少ない場合は、ウィルス感染症、薬物アレルギー、再生不良性貧血、白血病などが疑われます。

異常 要注意 基準値 要注意 異常
2.5 以下 2.6 〜 3.1 3.2 〜 8.5 8.6 〜 8.9 9.0 以上

血小板数(PLT)

血小板は、出血した時に最初に止血の役割を果たしてくれる血液の細胞です。
数値が高い場合は本態性血小板血症、鉄欠乏性貧血などが疑われます。

低い場合は、再生不良性貧血や急性白血病など骨髄での血小板産生の低下、特発性血小板減少性紫斑病など体の組織(脾臓など)で血小板が破壊され低下、肝硬変など脾臓へ分布異常などが考えられます。

異常 要注意 基準値 要注意 異常
9.9 以下 10.0 〜 12.9 13.0 〜 34.9 35.0 〜 39.9 40.0 以上

感染症系検査

CRP

細菌・ウィルスに感染する、がんなどにより組織の傷害がおきる、自己免疫反応などで炎症が生じた時などに、血液中に増加する急性相反応物質の1つです。

細菌やウィルス感染症、慢性炎症、膠原病、がんなどで高値となります。

基準値 要注意 異常
0.4 以下 0.5 〜 0.9 1.0 以上

HBs抗原

B型肝炎ウィルスに感染していないかを調べます。
陽性の場合は、現在B型肝炎ウィルスが体内にいることを意味します。

基準値 異常
陰性(−) 陽性(+)

HCV-III抗体(HCV第3世代抗体)

C型肝炎ウィルスに感染した事があるかどうかを調べます。
陽性の場合は、C型肝炎ウィルスに感染したことがあると判定されますが
• 現在C型肝炎ウィルスが体内にいる
場合と
• 過去にC型肝炎ウィルスに感染した既往があるが、現在C型肝炎ウィルスは体内にいない
場合の両方が考えられます。
これらを区別するには更に、HCV-RNA検査などを行います。

基準値 異常
陰性(−) 陽性(+)

尿蛋白

腎臓障害があると尿蛋白が出現することがあります。
腎炎、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、などが考えられます。

基準値 要注意 異常
陰性(−) (±)(+) (2+以上)

便潜血(抗ヒトHb法—2回法)

便に血が混ざっているかどうか調べる検査です。
陽性(+)の場合は、大腸ポリープ、大腸がん、痔など消化管の出血性の病気が考えられます。

異常なし 異常
2回とも(−) 1回でも(+)

甲状腺検査

甲状腺機能検査(TSH,FT3,FT4)

甲状腺ホルモンには、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という二種類があります。血液中に遊離した甲状腺ホルモンであるフリーT3(FT3)とフリーT4(FT4)と、脳下垂体から分泌されるTSHという甲状腺刺激ホルモンを合わせて測定すると、甲状腺機能が正常か、亢進しているか、低下しているかが分かります。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)は脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの産生を調整するホルモンです。血液中の甲状腺ホルモンが低くなるとTSHは増加し、逆に血液中の甲状腺ホルモンが多くなるとTSHが減少します。このような調節の仕組みをネガティブ・フィードバック機構といいます。
フリーT3・フリーT4が高くTSHが低くなれば甲状腺機能亢進症、フリーT3・フリーT4が低くTSHが高くなれば甲状腺機能低下症と判定されます。

基準値 正常 原発性甲状腺機能亢進症 原発性甲状腺機能低下症
TSH 0.35 〜 3.8μU/ml
FT4 0.7 〜 1.7ng/ml
FT3 2.2 〜 4.1pg/ml

甲状腺自己抗体

橋本病やバセドウ病などの病気を特定するためには、上記のTSH,FT4,FT3の他に、抗サイログロブリン抗体(抗TgAb)、抗ペルオキシダーゼ抗体(抗TPOAb)、TSHレセプター抗体(TRAb)の三項目の検査が必要です。

●抗サイログロブリン抗体(抗TGAb)

甲状腺にあるサイログロブリンという蛋白に対する自己抗体です。
橋本病では約90%、バセドウ病では約80%で陽性なります

基準値 異常
0.3 未満 0.3 以上

●抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体(抗TPO抗体)

甲状腺ペルオキシターゼという蛋白に対する自己抗体です。
橋本病では約80%、バセドウ病では約90%で陽性になります。

基準値 異常
0.3 未満 0.3 以上

●抗TSHレセプター抗体(抗TR-Ab)

甲状腺の細胞表面には、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が結合する受容体であるTSHレセプターがあります。このTSHレセプターに対する自己抗体が、抗TSHレセプター抗体です。
抗TSHレセプター抗体(抗TR-Ab)は、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促進します。
バセドウ病の原因物質と考えられており、正常の人は持っていません。

基準値 異常
陰性 陽性

自己免疫検査

●抗核抗体

本来、抗体とは、体の中にウィルスなどの外敵が体の中に侵入した時に、それを破壊する免疫物質です。
ところがヒトは、自分自身の細胞を間違って破壊してしまう自己抗体を作ってしまうことがあります。
これらの自己抗体のうち、細胞の核内にある物質と反応する抗体は抗核抗体と呼ばれます。

基準値 異常
40倍未満 40倍以上

*ただし女性では、40倍を基準にすると約20%で陽性になるので、160倍以上が異常所見と考えるのが妥当です。
抗核抗体が陽性の場合には膠原病の可能性があり、詳しい血液検査が必要となる場合があります。
全身性エリテマトーデスでは抗dsDNA抗体、強皮症(全身性硬化症)では抗scl-70抗体、皮膚筋炎・多発筋炎では抗Jo-1抗体、混合性結合織病では抗RNP抗体、血管炎症候群ではMPO-ANCAやPR-3ANCA、シェーグレン症候群では抗SS-A抗体や抗SS-B抗体、抗リン脂質抗体症候群では抗CL-β2GPI抗体などが出現します。

●リウマチ因子、リウマトイド因子(RAテスト)

リウマチ因子はヒト免疫グロブリンであるIgGに対する自己抗体です。
慢性関節リウマチ患者さんの約80%で陽性ですが、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群などの膠原病、慢性肝炎や肝硬変などの肝臓病などでも陽性になることがあります。

基準値 判定保留 異常
(−) (±) (1+以上)