リウマチ性多発性筋痛症
■ はじめに (polymyalgia rheumatica:PMR)
PMRは60歳以上の人に圧倒的に多く、人口の高齢化とともに増加する傾向にあります。原因不明のリウマチ性疾患で、1ヶ月以上持続する肩甲部、骨盤部、頚部の著しい筋肉痛とこわばりが特徴です。
■ 頻度と性差
50歳以上の高齢者10万人当たり年間発症率は約50人で、女性は男性の約3倍と女性に多い病気です。発症年齢は平均70歳で50−90歳以上まで分布します。
■ 症状
筋肉痛とこわばりは突発的に出現することが多く、その程度は著しく強く、特に起床時にかなりの苦痛を認めます。「カミソリで筋肉が削り取られるように痛む」「寝返りを打つことも出来ないほど痛い」などと表現されることもあります。ベッドや椅子から立ち上がれない事も多いのですが、筋力低下はほとんどありません。筋肉痛は広範囲に及びますが、一ケ所のみが著しく痛い場合もあります。
全身症状として、発熱・全身倦怠・食指不振・体重減少・抑うつ傾向など筋肉以外の症状も発症早期から認めます。
■ 検査所見
赤沈が著しく亢進する症例が多いのですが、正常や軽度高値の場合も約20%存在します。
筋肉由来の酵素であるCK、LDH、ミオグロビンは上昇しません。
リウマチ因子や抗核抗体の陽性頻度は健常人と変わりません。炎症反応ではCRPは陽性で、特に赤沈値が著明に促進しています。
■ 診断基準 (Bird ら、1979)
1, 両肩の疼痛および/またはこわばり
2, 発症後2週間以内に症状が完成
3, 血液検査で赤沈(1時間)が40mm以上
4, 65歳以上
5, うつ状態および/または体重減少
6, 両側上腕筋肉の圧痛
上記7項目中、3項目以上存在する
または少なくとも1項目以上と側頭動脈炎が存在する
鑑別疾患としては、慢性関節リウマチ、多発筋炎・皮膚筋炎、線維筋痛症、好酸球性筋膜炎、血管炎などがあげられます。
■ 治療
リウマチ性多発筋痛症は少量のステロイド剤によって短時間のうちに症状が改善するのが特徴です。しかし側頭動脈炎を合併していると失明の危険があるため、ステロイドの中—大量治療が必要になる場合もあります。また患者さんの中には非ステロイド系抗消炎剤が著効する方がいます。特に高齢者ではステロイド剤の副作用は重大な問題ですので、短期間のステロイド使用後に非ステロイド系抗消炎剤に切り替える場合もあります。