女性と片頭痛

■ はじめに
片頭痛片頭痛は、何らかの原因で頭蓋内外の血管が拡張することにより、血管を取り巻く神経が刺激されるために起こる頭痛です。片頭痛の発作は、前段階として脳血管内の血小板からセロトニンが異常に放出され、これに反応して血管が収縮して、まず血流障害が起きます。その後セロトニンが枯渇すると逆に血管が拡張し、その拡張した血管により三叉神経が刺激されるために起きると考えられています。

■ 頻度と性差
片頭痛は頭痛発作を繰り返すのが特徴ですが、日本では約8.4%の人が片頭痛を持っていると言われています。比較的若い年代(30−40代)に多く、また女性に多い(男性の約4倍)のが特徴です。

■ どのような痛み?
脈に合わせて「ズキンズキン」と激しく痛みます。徐々に痛み出すのではなく、急に激しい痛みに襲われることも緊張型頭痛との違いです。片頭痛といっても頭の片側だけが痛むとは限らず、両側が痛むこともよくあります。数時間から2〜3日続く痛みが、1ヵ月に数回繰り返されるのが特徴で、発作の前に気分や体調の変化、キラキラ光る暗点が見える閃輝暗点や、視野が狭くなったりする目の症状がある事があります。また、吐き気や嘔吐を伴ったり、音や光に敏感になることもあります。

前兆を伴わない片頭痛の診断基準
A B-Dを満足する頭痛発作が5回以上ある。
B 頭痛の持続時間は4−72時間。
C 以下の4項目のうち少なくとも2項目を満す。

  1. 片側性頭痛
  2. 拍動性
  3. 日常生活を阻害する中—高度の頭痛
  4. 階段昇降あるいは類似の日常運動により頭痛が悪化する

D 頭痛発作中に少なくとも下記の1項目を満たす。

  1. 悪心及び・または嘔吐
  2. 光過敏及び音過敏

E 器質疾患による頭痛を否定できること。

前兆を伴う片頭痛の診断基準
A Bを満足する頭痛発作が2回以上ある。
B 以下の4項目のうち少なくとも3項目を満たす。

  • 大脳皮質—及び・又は脳幹の局所神経症候と考えられる完全可逆性の前兆がひとつ以上ある。
  • 少なくとも一つの前兆は4分以上にわたり進展する。2種類以上の前兆が連続して生じてもよい
  • いずれの前兆も60分以上持続することはない。ただし2種類以上の前兆があるときは合計の前兆の時間が延長しても良い。
  • 頭痛は前兆後60分以内に生じる(頭痛は前兆の前、又は同時に始まっても良い)。

C 器質疾患による頭痛を否定できること。

片頭痛を引き起す誘因

  1. ストレスからの解放
    ストレス中は血管が緊張しているために頭痛は起きませんが、ストレスから解放されると血管が拡張し頭痛が起きます。仕事から解放された週末に片頭痛が現れることが多いのです。
  2. 女性ホルモンの変化
    生理の前後はホルモンが急激に変化するため片頭痛が起こりやすくなります。逆に妊娠中はホルモンが安定するため起こりにくくなります。
  3. 人ごみや騒音、喫煙、強い臭いや強い光などの物理的刺激
  4. 特定の飲食物の摂りすぎ
    人によっては飲酒、特に赤ワイン、喫煙、コーヒー、チョコレート、チーズ、柑橘類、ナッツ、中華料理などによって片頭痛が起きることがあります。

片頭痛の予兆 (頭痛が起きる前ぶれ)

頭痛が始まる2〜3時間前に見られる症状

  • あくび
  • イライラ
  • 空腹感
  • 甘いものが食べたくなる
  • むくみ など

片頭痛の前兆 (頭痛の始まるサイン)

片頭痛の前兆頭痛の始まる30分くらい前に起こります。

  • 閃輝暗点:視界にチカチカした光(閃輝)が広がり、やがて中心部から見えにくくなる(暗点)。

■ 治療
軽症例では一般的鎮痛薬で十分ですが、中等度以上の片頭痛発作ではセロトニンを介して脳血管を収縮させる経口トリプタンが第一選択となります。以前から用いられているエルゴタミン製剤はトリプタンが効かない例に有効とされています。制吐薬であるメトクロプラミドは片頭痛治療薬ではありませんが、随伴する悪心・嘔吐には効果があります。救急室ではトリプタンの皮下注射が使用される事もあります。
やむを得ず、妊婦さんに頭痛薬を投与する場合には、アセトアミノフェンが安全です。