月経前症候群
■ はじめに
月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)は月経前緊張症(premenstrual tension)とも呼ばれ、「月経周期の黄体期に繰り返し出現し、種々な身体的、精神的あるいは行動的症侯により、対人関係や日常生活が障害されるもの」と定義されています。月経前の2週間以内(高温相)に周期的に発症し、月経開始後まもなく消失する精神的ならびに身体的症状を指します。この症状の主体が精神緊張であるために、月経前緊張症とも呼ばれている。
月経前症候群は上記にように定義されていますが、症状の程度から診断することは簡単ではありません。すなわち日常生活が障害されるといっても「どの程度から障害されるのか?」と定義するのか困難だからです。そのため,統計的な報告も様々で,症状の軽いものまで含めると、5〜90%と調査方法によって大きな違いが生じます。しかし、症状がひどく、臥床したり、仕事を休まざるを得ないほどの女性は10%以下(3〜5%程度)と考えられています。
■ 原因
月経前症候群が増殖期(卵胞期、低温相)にはその症状が全く認められずに、黄体期(分泌期、高温相)になると下記のような精神症状や身体症状が出現することから、内分泌環境の変化が病因と考えられています。黄体期のプロゲステロン(黄体ホルモン)不足説、エストロゲン(卵胞ホルモン)過剰説、エストロゲン/プロゲステロン比高値説などがありますが、明らかな原因ははっきりとしていません。
■ 症状
症状としては150以上もあると言われ、その程度も個々人によってマチマチです。代表的な症状として以下の症状が挙げられています。
A.精神症状
いらいら 怒りやすい 集中力低下 疲労感 睡眠障害など
B.身体症状
- 疼痛:下肢痛(大腿部痛)、肩こり、腰痛、下腹部痛
- 乳房症状:乳房緊満感、乳房痛、乳頭過敏
- 消化器症状 : 腹部膨満感、便秘、食欲不振、嘔気
- 神経症状:頭痛、めまい
- アレルギー・皮膚症状:喘息の悪化、皮膚の荒れ・かぶれ、ニキビ、蕁麻疹
- 水分貯留症状:体重増加、顔面や四肢の浮腫、尿量減少
など
■ 【PMS( 月経前症候群 ) の3つのポイント】
- 周期的に症状が現れる
- 排卵後から月経が始まるまで(月経周期の黄体期、高温期)に症状が現れる
- 日常生活にある程度影響するくらいに症状が重い
■ 治療
月経前症候群(PMS)の病因が不明なので、その治療法として対症療法、ホルモン療法、ビタミン剤、向精神薬などさまざまな薬物療法が行われています。よって個々の症例に応じて治療方法が選択されます。
まず自分自身で出来る症状を緩和する対処
- 基礎体温をつけることにより月経前の時期であるということを認識する
- 適度な気分転換やリラックスを心がける。
- 無理をしないよう心がける
- 野菜、果物をなるべく摂るよう心がける
- 甘いものを控える ( 血糖値の変動はイライラや憂うつな気分を招きます )
- 神経を過敏にするカフェインは控える
- むくみの原因になる塩分は控える
- 窮屈な服は着ないようにする
■ 薬物療法
- 対症療法
抑うつ、いらいらなどの精神神経症状→抗不安薬など
下腹部痛や腰痛→プロスタグランジン合成阻害薬の非ステロイド系抗炎症薬や鎮痛・解熱剤など
乳房痛→抗プロラクチン作用のあるブロモクリプチンなど
浮腫や体重増加→水分・塩分制限と必要に応じて少量の利尿剤 - ホルモン療法
排卵抑制が症状軽減に有効との報告が多く、低容量ピルが使用されています。また黄体機能不全の改善あるいは黄体ホルモンの急激な低下を抑制する目的で月経周期の黄体期に黄体ホルモンが使用される事もあります。 - ビタミン療法
ビタミンB6欠乏が月経前症候群の抑うつ状態などに関与しているとの報告もあり、ビタミンB6の投与が有効の場合があります。