女性と膀胱炎
■ はじめに
膀胱炎はその名のとおり、尿をためる臓器である膀胱の粘膜に炎症が起こる病気で、そのほとんどが細菌感染( 大腸菌が70〜95%を占めます)によるものです。
■ 性差
膀胱炎は女性に多く発症する感染症で、女性の4人に1人がかかるといわれています。特に妊娠が可能な年齢でよく起こります。
女性に膀胱炎が起こりやすい理由としては、
- 女性の尿道が短いこと・・・女性の尿道は3〜4cmで男性(18〜25cm)に比べるとかなり短くなっています。細菌が逆行して膀胱に行きやすいのです。
- 細菌のいる腟や肛門と、尿道との距離が男性よりも近いことなどが挙げられます。
- 妊娠した状態では膀胱を空にしにくくなるため、妊婦さんは特に膀胱炎を起こしやすくなります
- 職場などでは女性はトイレを長時間我慢する傾向にあり、膀胱が伸びきったり、長時間にわたって冷えたりすると、膀胱内の血流量が減って、感染防御機構が弱くなり、細菌が繁殖して膀胱炎になりやすい
- 更年期以降の女性では、女性ホルモンの減少により、膀胱粘膜が薄くなるため粘膜が感染しやすくなるなどが原因です。
■ 膀胱炎の種類
● 単純性膀胱炎は腎臓や膀胱に何も疾患がなく発症する膀胱炎で、20〜40才の女性の25〜35%が罹患するといわれています。感染症としては比較的軽症で、大腸菌が原因になることが多く、抗菌薬(抗生物質)も良く効きます。
● 再発性膀胱炎
膀胱炎は再発しやすい感染症で、「疲れると症状がでる」といった事もあります。しかし、子宮筋腫など婦人科系の病気や、膀胱結石、尿道狭窄、膀胱がんなどの泌尿器科系の病気が隠れている可能性がありますので、あまりにしつこい場合は他に病気が隠れていないか検査が必要となります。
● 間質性膀胱炎は、感染を伴わない膀胱の炎症で、尿検査で細菌感染は認められず原因は不明です。中年女性に多く、男性に発症する事はほとんどありません。SLE(全身性エリテマトーデス)などの膠原病に合併する事があります。膀胱は萎縮し、膀胱鏡検査で膀胱粘膜に小さな出血や潰瘍が見つかる事があります。さまざまな治療法が試みられていますが、決定的な治療方法はありません。
■ 膀胱炎の症状
- 頻尿(トイレの後でもすぐに行きたくなり、回数が多い)
- 排尿時に尿道の出口に焼けつくような痛みを感じたり、残尿感がある
- 血尿や濁った尿もみられる。約30%で肉眼的に分かる血尿になります。
- 下腹部の痛みや重苦しい感じがする
- 微熱が出ることがある
など
■ 治療はどうしますか
膀胱炎は通常、抗生物質で治療します。急性膀胱炎の原因菌は、大腸菌が70〜95%を占めます。多くの抗菌剤が大腸菌に良く効きますが、ペニシリン系の抗生剤に対する耐性菌が徐々に増加しているため、通常はニューキノロン系や新経口セフェム系の抗生剤が使用されます。女性の場合、合併症が起こっていなければ抗生物質を3日間服用するのが標準的な治療となりますが、治療薬によっては1回の服用で十分な場合もあります。感染が長びく場合には抗生物質を7〜10日間服用します。
症状がない膀胱炎の治療にも抗生物質を使うと、抗生物質に耐性をもつ細菌が増殖する可能性があり、かえって有害となる恐れもあります。ただし妊娠中の膀胱炎の場合は、病原微生物が腎臓に達して重症感染(腎盂腎炎)を起こすリスクが高くなるため、無症状でも抗生物質で治療する事が多くなります。
■ 膀胱炎を予防するには
膀胱炎を年に3回以上起こす女性には、以下の方法が予防に役立つ可能性があります
・普段から水分摂取量を増やす
・排尿を我慢しない習慣をつける
・性交後は早めに排尿する
などが勧められます。