低用量ピルって何ですか?
妊娠中の女性には排卵・月経がありません。それは妊娠中に女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が、常にある一定値以上に分泌されているからです。この原理を応用して、2種類の女性ホルモンを微量だけ飲むことにより、排卵を抑制し妊娠を予防したり、月経に伴うさまざまなトラブルを緩和したり、プレ更年期の症状や自律神経失調症状などを解消することができます。
以前に日本で使用されていたピルは、現在使用されている低用量ピルよりもホルモンの含有量が多く、中用量ピルと呼ばれていました。そしてホルモン量が多いために副作用が問題となっていました。しかし低用量ピルは、女性ホルモン量を避妊効果の得られる最少の量まで減らすことに成功したピルです。ホルモン量を減らすことで副作用が軽減され、より安全にピル(低容量ピル)が使用出来るようになりました。
ピルには避妊以外にも多くのメリットがあります
1.月経痛の軽減
ピルを飲んでいても、みかけ上の月経である消退出血は起きます。しかし、出血量は少なく子宮収縮も抑えられるので痛みが軽減します。
2.月経不順の改善
ピルにより月経の周期がきちんとコントロール出来ます。
3.月経過多の軽減
ピルにより子宮内膜の増殖が抑えられ、出血は軽減し貧血も改善されます。
4.月経前症候群の軽減
月経前にイライラする、落ち込む、不安になるなどの症状を軽減できます。
5.プレ更年期の改善
30台—40台前半にみられるプレ更年期の症状(自律神経失調症状など)が軽減できます。
6.自律神経失調症の軽減
交感神経と副交感神経のバランスは、女性ホルモンの影響を強く受けています。女性ホルモンが安定すると、自律神経失調症状が軽減します。
7.子宮内膜症のリスクの低下
ホルモン状態が安定し、子宮内膜の増殖が抑えられます。
8.子宮体ガンと卵巣ガンの予防
ピルにより排卵が抑制されるため、卵巣ガンの発生頻度が低下し、またピルに含まれる黄体ホルモンが子宮内膜を保護するといわれています。
9.ニキビの改善
ピルに含まれる女性ホルモンがニキビの原因となる男性ホルモンの働きを抑えて、ニキビを改善します。また男性ホルモン作用の少ないピルは、特に美容ピル(美肌ピル)とも呼ばれています。
低用量ピルの副作用
ピルは妊娠した時と同じようなホルモン状態を作る薬ですから、飲みはじめには悪阻(つわり)症状が出ることがあります。気持ち悪くなったり、吐き気がしたり、頭痛、体重増加(1-2kgといわれています)、不正出血が出現する事があります。多くの場合、飲み続けることでこれらの症状は消失しますが、どうしても我慢できない時は医師に相談して下さい。ピルの種類を変更してもらうことをお勧めします。
また、血栓症や乳ガン、子宮頚ガンなどの発症頻度が高くなる可能性が指摘されています。高血圧の人、一日15本以上の喫煙者や乳ガンの疑いのある人などは、ピルを服用できない(禁忌)ので、必ず事前に医師に申し出て下さい。
月経は止まるのですか?
ピルを飲んでいても月経のような出血、消退出血は起こります。
服用が終了した後、2-5日して軽い月経のような出血があります。
旅行などで月経を移動させたい時には、月経移動が容易なピルがありますのでご相談下さい。
どんな種類がありますか?
服用方法による分類 | DAY1スタートタイプ→月経開始の初日から飲みはじめます。 サンデースタートタイプ→月経開始後、初めての日曜日から飲みはじめます。週末に月経が重なりません。 |
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包装単位による分類 | 21錠タイプ 28錠タイプ |
配合による分類 |
一相性:全ての錠剤が同じホルモン量の配合剤です。 飲む順番を間違えても大丈夫 多相性(三相性):本来の女性ホルモンのバランスにあわせて配合を変化させたピルです。 飲む順番を間違えてはいけません |
かかる費用は?
低用量ピルは保険がききません。1ヵ月分のピルの薬代は2,200-2,600円程度、プラス診察代が加わります。最初にピルを処方する時には、採血や婦人科検診などの費用も必要です。
必要な検査
一般検査 | 副作用の起こりやすい基礎疾患や喫煙歴などが無いかチェックします。 |
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一般採血 | 貧血、肝機能障害、脂質異常症などがないか調べます。 |
婦人科的検査 | 女性ホルモンに関連した子宮筋腫や子宮内膜症などの有無、子宮頚部・体部がん検診などを実施します。 |
性感染症検査 | ピル服用の機会を利用して、STD(性感染症)に対する認識を高めることが重要です。 |
服用に際しての注意事項
毎日1錠ずつ飲みます。一定の時間に服用する習慣をつけましょう。
消退出血が2ヵ月以上こない時には、妊娠の可能性がありますので必ず受診して下さい。
ピルを服用している人の中には、コンタクトレンズを装着している時に違和感を訴えることがあります。
併用薬の注意事項
胃薬、風邪薬、頭痛の薬など、ほとんどの薬は大丈夫ですが、注意の必要な薬もあります。
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の作用が増強することがあります。
抗うつ薬の作用が増強することがあります。
てんかんの薬(抗けいれん薬)、抗アレルギー薬によってピルの効果を減弱させるものがあります。
抗生物質の中にはピルの効果を減弱させるものがあります。
糖尿病の人は要注意、インスリンや糖尿病の治療薬の作用が増強することがあります。
便秘薬の成分中に、セイヨウオトギリ草やオオバコが含まれている場合、ピルの作用が減弱する可能性があります。
使用上の注意
クラミジア、HIV などをはじめとする性感染症(STD)予防のためには、コンドームの適正使用が重要です。
子供が欲しくなった
ピルを飲むことを止めれば、だいたい2−3ヵ月位で通常の生理周期に戻るとされています。