性差医療(gender-specific medicine)とは?
性差医療(gender-specific medicine)は、1990年代よりアメリカを中心に広がってきた新しい医学・医療の流れです。この考え方は、男女の性差を考慮せず、画一的に施行されてきたこれまでの医療に対する反省から生じたものです。性差を重視して適切な診断と治療を進めていこうというのが「性差医療」です。
女性特有の疾患
月経前症候群(premenstrual syndrome ; PMS)
PMSは「月経周期の黄体期に繰り返し出現し、種々な身体的、精神的あるいは行動的症侯により、対人関係や日常生活が障害されるもの」と定義されています。すなわち、月経前2週間以内に周期的に発症し、月経開始後まもなく消失する精神的ならびに身体的症状を指します。
いらいら、憂鬱、怒りやすい、集中力低下、不安、疲労感、不眠、傾眠などの精神症状。腰痛、乳房緊満感、腹部膨満感、便秘、食欲不振、嘔気、顔面・手足のむくみ、頭痛、めまいなどの身体症状を自覚します。
更年期障害
女性ホルモンの急激な減少による更年期障害は、個人差があるものの、多彩な症状が出現するため、女性の生活の質(QOL)は著しく低下します。代表的な症状としては、急激なのぼせ、ほてり、発汗、うつ傾向、倦怠感などがあげられます。
その他
月経異常(無月経、月経不順、月経困難症、過多月経)、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮癌、卵巣嚢腫、卵巣機能障害、卵巣癌、流産、妊娠合併症、分娩合併症(帝王切開等)などの産婦人科疾患。
乳腺症、乳癌などの乳腺疾患。
女性に多い内科疾患
鉄欠乏性貧血
女性には月経があるため、閉経前の女性に鉄欠乏性貧血が多いのは当然です。しかし閉経後の女性に鉄欠乏性貧血が生じた場合、からだのどこかに出血をきたす病変の存在が疑われます。その多くは消化管に由来するもので、胃・十二指腸潰瘍、胃癌、大腸癌、痔などが原因となるので注意が必要です。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は閉経後にあらわれる病態として、極めて頻度の高い疾患です。閉経後の女性においては、女性ホルモンであるエストロゲンが急速に減少するため、男性と比較して急激な骨密度の減少が見られます。その結果、骨粗鬆症が進行し骨折の発生頻度が急激に増加します。
自己免疫疾患(膠原病)
橋本病やバセドウ病などの甲状腺疾患、特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、SLEなどの膠原病
その他
胆石症、便秘症、気分障害などの精神疾患、低血圧症、冷え性、胃下垂、膀胱炎、アルコール依存症などがあげられます。また閉経後の糖尿病、脂質異常症、高血圧症、虚血性心疾患に代表される動脈硬化性疾患、アルツハイマー型認知症にも注意が必要です。
さらに肺がんには幾つかの種類がありますが、アメリカの疫学調査によると、小細胞がんでは喫煙経験者が小細胞肺がんにかかる危険度は、女性では男性の2.3倍との報告もあります。